あなたが得意で大好きな事を人から褒められた時、どんな気持ちになりますか?
それがあるいは誰かの力になったと実感した時、あなたはとても嬉しくて誇らしい気持ちになるでしょう。
大好きで得意な事に共感されたり褒められたりした時の気持ちは我々をとても幸せにしてくれます。
「こころ」があり、人間と生活してきた犬たちにとってももちろん同じです。
しかし、最近の犬たちはその経験をあまりさせてもらっていないように感じます。
命令ばかりされていては辟易してしまうのは犬も人間も同じです。
命令ばかりでは犬の「こころ」は育ちません。その昔、犬は自分の得意な事をとても褒めてくれる人間という生き物を相棒として選びました。
しかし、人間側の都合で、得意で大好きな事で褒められる事が減ってしまっています。
犬にとってはとても残念なことです。
犬は臭いを嗅ぐことが大好きです
犬と暮らすということにおいての母ちゃんの師匠は母ちゃんの父ちゃんです。
つまりまぐろさんにとってはお爺ちゃんです。
うちの父ちゃんは先日亡くなってしまいましたが、心優しい鉄砲撃ちで、母ちゃんは父ちゃんから命の大切さをたくさん学びました。
鉄砲撃ちですので、うちで暮らした犬のほとんどが「猟犬」でした。
我が家の犬たちは父ちゃんの言うことをとても良く聞く犬たちでした。
父ちゃんといっしょに山に入り、父ちゃんのお手伝いをして獲物を狩るのを楽しみにしていました。
もちろん、多くの場合は「ボウズ」で帰ってくるのですが、山から帰ってきた父ちゃんと犬はとても幸せそうで、そこには確かに信頼関係がありました。
ですから母ちゃんにとっては人間が犬と共同作業をするのが至極当たり前の事で、そしてそれがこの上ない幸せを生んでいることを知っていました。
犬は臭いを嗅ぐことが大好きです。
大好きなだけでなく、とても得意です。
これはおそらく、犬という種であればほとんど例外なく言える事です。
我々人間は視覚を主として生活している生き物ですので、臭覚を主として生きる犬の気持ちを疎かにしがちです。
人間の子供が興味を持ったものを視覚で観てカッコいい!とかかわいい!とかいってテンションを上げるように、犬は興味を持ったものの臭いを嗅いでテンションを上げます。
そして、犬は従来、好奇心が旺盛です。
だから気になるものは臭いを嗅ぎに行きます。
うちの父ちゃんと父ちゃんの犬たちが強い絆で結ばれていたのは、犬の得意で大好きな臭いを嗅ぐという作業がうまくできた時に、父ちゃんが嬉しいという最初に人間と犬が絆を結んだ時の状況がそこにあるからだと母ちゃんは考えています。
臭いを嗅いで叱られる現代の犬たち
犬の挨拶はお尻の臭いを嗅ぐ事です。
あなたの犬が公園でお友達の犬と出会った時、あなたが恥ずかしいからといってお尻の臭いを嗅ごうとする犬を叱る事は、「友達に会ったら挨拶してはいけません!」と叱るのと同じ事です。
あなたの犬は、「お友達を作ってはいけません」と叱られたと感じるかもしれません。
従来からフレンドリーである犬は、「周りは全部敵!」と理解するかもしれません。
人間にとっては「お尻の臭いを嗅ぐ」という恥ずかしい行為なのかもしれませんが、犬にとっては大切な「ご挨拶」です。
飼い主さんがそれをさせないというのは、犬を見たら敵だと思えと言っているようなもので、公園で他の犬に火がついたように吠えるのは当たり前の事です。
犬はどこも悪くありません。
あなたが道路の臭いや電柱の臭いを嗅いで歩く犬を止めた時、それは気になるものを見てはいけないと目を塞がれるのと同じことです。
モノの正体がわからないというのは人間でも恐ろしいことですので、もちろん犬にとっても恐ろしいものです。
あなたが道路を歩く時、犬が臭いを嗅ぐのを止める場合、犬は常にそれがなんなのか確認できないという状態にあり、ずっとストレスにさらされています。
もちろん、現代ではマナーとして道路の臭いを嗅ぎながら歩く事はできない場合もあります。
だから公園でやっと犬が臭いを嗅いでも良いという場合はそれを止めてはいけません。
止めた場合、犬のストレスはもうマックスです。
大好きな臭いを嗅ぐということ、あらゆる好奇心で臭いを嗅ぐという行為を止められたストレスフルな散歩から帰って、大嫌いな足拭きを強要された場合、犬のストレスはそこで爆発するかもしれません。
玄関にお届けモノの段ボールが置いてあり、犬が臭いを嗅ぐ場合は、それが自分の家族に危害を加えるものでないかどうか、確認しています。
それを叱るのは危険物を確認せずに放置するのと同じ事です。
それが続いてしまった場合、危険物かどうかわからないからとりあえず破壊してしまうかもしれません。
現代の犬は、とにかく得意で大好きな臭いを嗅ぐという事をさせてもらえない状況が多くあります。
あなたの大好きな事を止められたら、あなたはどういう気持ちになりますか?
あなたが周りを確認するためにもつ視覚を塞がれてしまった場合、どう思いますか?
人間のために臭いを嗅ぐ犬たちは活き活きしている
警察犬や麻薬探知犬などは、バディさんといっしょに共同作業を行う犬です。
彼らはその大好きで得意な臭いを嗅ぐという能力を使ってバディさんの手助けをします。
彼らはとても活き活きとして尊敬できる存在です。
本来の人間と犬との協力関係がそこにあり、それはうちの父ちゃんと犬たちとの表情にとても似ています。
そのような特殊な状況や作業でなくても、家庭で犬に臭いを嗅ぐという犬が大好きで得意な能力を伸ばし、活き活きと人間社会を暮らして行こうという試みはすでにはじまっています。
一番身近なものでは、「ノーズワークマット」という知育玩具です。
これは、臭いを嗅いでおやつを探すという知育玩具で、本来もつ犬の能力を楽しく引き出してしまおうという知育玩具です。
カナダ式のセントトレーニングを取り入れた訓練士さんもいたりします。
この本は、表紙の犬がまぐろさんにそっくりで、母ちゃんのお気に入りです。
「ノーズワーク」は徐々にスポーツとして捉える人も増え、人間もいっしょに楽しめる共同作業として認知されつつあります。
特殊な作業をする犬でなくても、彼らの得意なこと、大好きなことを人間との共同作業として楽しみ、共に喜び、現代社会における犬と人間の少し歪んでしまった関係を修復する試みはたくさん生まれています。
それは犬の心を育てようという試みです。