あなたの相棒である犬が、音であろうが見たモノであろうが背景に関係なく、なんでもかんでも吠えるようにみえる場合は、おそらくその吠えは警報のための吠えです。
警報のための無駄吠えを予防するには犬の環境を管理するのが一番です。
警報のために吠える犬は、通常、挨拶のために吠えている犬よりも激しいボディランゲージを持っており、吠えながら時には少し前方に跳ねたりします。
警報のために吠える犬は、縄張り意識で吠える場合と違う鳴き声をし、自分のテリトリーや生活圏を守るためだけでなく、もっと多くのあらゆる場面で吠えます。
それは、音を使った警報であり、相手への警告という意味もありますが、飼い主さんや自分の家族対するお知らせの意味合いもあります。
警報として犬が吠えるのは人間のため
警報のために吠える場合は、縄張り意識よりもアグレッシブではなく、ただちに攻撃に転じるような事はありません。
ですからボディランゲージを伴う場合も多くあります。
人間はその昔、犬の警報にとても感謝していました。
現代ほどしっかりとした住居や、領土を隔てる柵などを持たなかった我々人間の祖先は、犬が警報を発することをむしろ素晴らしい能力であると判断し、犬という動物を家畜化する過程で、警報を発するのが得意な犬を繁殖しました。
現代においても、家の玄関の前に誰かがやって来た時、犬が2、3度軽く吠えることはむしろ歓迎される場合もあるのではないでしょうか。
しかしながら、あなたの家の周りを通りがかる全ての見聞きしたものに、どれもこれもことごとくしょっちゅう反応するのであれば、これはとても厄介です。
多くの集合住宅の住人は、犬が扉の前を通り過ぎたり、エレベーターから降りた時にすれ違ったりした時にいつも吠えるというのはとても迷惑だと感じます。
日本の住宅事情は、犬の警報を発するという行為が騒音とみなされる場合がとても多いのです。
犬が吠えるという行動は、人間に色々なことを知らせるためにとても重宝されて、吠えるという行動を強化されて来たのに、現代の……特に日本における住宅事情で、その吠えるという行動を厄介だと言われるのは悲しい話です。
警報として吠えることも、縄張り意識として吠える事も、犬にとっては当たり前の行動です。
さらにそれは、その昔から人間との友情のために強化されています。
彼らが何を考えるのか想像してみてください。
「私があっちへ行けって言ったら、うまくいったよ!あの宅配のお兄さんは私が吠えたから立ち去って行ったの!次の時も、頑張って追い払わなくちゃ!」
犬は、宅配のお兄さんが自分が吠えたから立ち去ったのか仕事を終えて立ち去ったのかを理解することはできません。
あなたの相棒もこんなふうに思っているように感じませんか?
無駄吠えを防ぐために犬の環境を管理する
警報として犬が過剰に吠える場合にもっとも有効な手段は犬の環境を管理するという事です。
警報としての吠えは、ほとんどの場合、環境によってトリガーを取り除くことに成功するからです。
無駄吠えのトリガーを特定する
特に警報のために吠える場合、それが警報である限り、吠える原因になる引き金があります。 吠え始めるスイッチです。 そのトリガーを特定する事が、警報のために吠える犬と問題なく生活するための一番最初の課題になります。 警報による吠えは、他の無駄吠えを強化していたり、関わりがあったりするものなので、トリガーの特定は最も重要な仕事です。 最近では留守番中にも犬を観察できる便利なドッグカメラというものもたくさん出ています。 うちの場合は老犬介護のおり、簡単な見守りカメラを設置し、留守の時の様子をいつでも観察できるようにしていました。 このドッグカメラは、犬がどのような時、どのような場面で、何に吠えているのか、飼い主さん自身がその場に居なくても観察できるので、あらゆる場面の観察が可能になります。
Furbo ドッグカメラ [ファーボ] という商品は、吠え声に反応するだけでなく、特定されたトリガーのいくつかに対処できる機能も備わっていて、大変便利なカメラです。
特定した無駄吠えトリガーに対処する
うちの母の犬はラブリーという名前の美しいヨークシャーテリアでした。
私がまだ小学校に上がる前の話です。
その犬を飼っていた頃、うちは一軒家の平家でしたが、ラブリーの過ごしていた部屋の窓の外は往来の激しい路地で、家の建っている場所は家屋の密接するスラムのような土地でした。
ラブリーの警報は小さな犬特有のけたたましいもので、母はラブリーとの幸せな生活を保つために、その警報による吠えに緊急に対処する必要がありました。
正確には、対処したのは私の犬師匠である父です。
彼がどうやってけたたましいラブリーの警報を辞めさせたかわかりますか?
父は立派なソファーを惜しげもなくポイっと粗大ゴミに出したのです。
ラブリーは小さなヨークシャーテリアだったので、本来ならば窓から往来の激しい路地を見ることはできません。
しかし、彼女は窓の傍に置かれたソファーの背もたれに昇り、窓の外を覗くことができたのです。
つまりうちの父は、ラブリーのトリガーである人の往来が見えるという環境を取り除くために、高価なソファーを粗大ゴミに出したのでした。
その目論見は成功し、母とラブリーの平和な生活は守られました。
ラブリーのように、窓から見える人の往来に反応して警報として吠える犬は実はかなり多く居ます。
その犬が視覚でトリガーを引かれる多くの場合、犬はその対象となる人物、あるいは車や自転車などを目で追います。
そして対象物が自分の認可できる範囲を超えて近づいた時、警報のスイッチが入ります。
視覚でトリガーを引かれる場合の対処方法は実はかなり容易です。
犬がそれを見えないように環境を管理してやれば良いだけです。
もちろん、その方法は犬の能力によって様々です。
個別性に合わせた対処方法が必要でしょう。
鼻先でカーテンを開けてしまう犬に、カーテンを閉めるという方法はなんの効力もありませんから。
ある種の遊び好きの犬には、外部からの刺激をそらせるために、長い間、犬の脳みそを警報のために吠えるという考えから遠ざけるためのオモチャを与えることが有効であったりもします。
まぐろさんは幼い頃、留守番中、コングで遊ぶ機会が多くありました。
コングで遊んでいるあいだ、まぐろさんはトリガーの刺激から離れてしまいます。
スイッチが入らなければ、犬は警報のために吠えることはないのです。
トリガーへの代替反応で感度を鈍くする
実は犬に、元々警報による無駄吠えを起こした原因……つまり、トリガーに対する代替反応を教えることができます。
これにより、人や自転車や車が通り過ぎるのを見聞きすることへの反応が鈍くなります。
視覚的なトリガーの場合
対象となるトリガーが見える状態の時、犬が吠える前に相棒の大好物を与えます。
トリガーが見えなくなったら大好物を与える事を辞めます。
こうやって犬のトリガーを見た時の感情的な条件付けを替えるのです。
トリガーが見えるとおいしいものが食べられる。
やがて相棒はトリガーが見えた時、警報として吠えないで、「おいしいものをくれるでしょ?」とあなたの顔を見るようになります。
今度はそのタイミングで相棒の大好物を与えるようにします。
そうやって犬の感情をコントロールし、行動反応を変えてやると、警報のための無駄吠えが減少していきます。
聴覚的なトリガーの場合
あらゆる音に反応して吠える場合は、視覚的なモノに対して吠える場合よりも少し難易度が上がります。
見える見えないというトリガーの判断は容易ですが、音に関してはタイミングが絶妙だからです。
トリガーが聞こえたら、犬が吠えるという反応をする前に、穏やかに褒めながら相棒の大好物を与えなければなりません。
重要なのは褒める時に落ち着いて穏やかに褒めるということです。
この方法の目的は、犬がトリガーが聴こえたら飼い主さんに褒められると予測するという犬の脳の関連付けを強化することにあります。
犬がトリガーに対して吠えないという反応が強化されてきたら、相棒の大好物をだんだんと減らし、吠えないという選択をした場合に穏やかに褒めるということに切り替えていきます。
そのうち犬は騒音に慣れていきます。
すでに吠えている犬に静かにするようにお願いする
この方法が無理だと思っている飼い主さんは多いと思います。
すでにけたたましく吠えている犬を静かにさせるのは不可能であるというのです。
本当にそうでしょうか?
この方法を可能にするためには吠えている犬が静かになる瞬間を作り、それを間違いなく飼い主さんが捕らえるという事が重要になります。
例えば、犬がけたたましく警報を鳴らし始めたら、「静かに!」と低く声をかけた後、反応を見ます。
これは一瞬の出来事です。
犬が黙る瞬間を逃してはいけません。
最初、犬は声をかけられた事に反応し、黙ります。
その瞬間に褒めながら相棒の大好物を与えるのです。
犬は一度だけでは吠えるのを辞めたからオヤツをもらえたと関連付けることはできません。
これと全く同じことを繰り返します。
そのうち犬は「静かに」という言葉が吠えるのを辞めるということであると関連付けていきます。
これで、静かにしてとお願いする土台ができあがります。
自分の名前に反応する犬なのであれば、名前を呼ぶとそちらに気を取られ、トリガーに対する反応が鈍くなる場合があります。
いずれにせよ、その犬のおかれた環境やトレーニングの進捗具合などで、方法が変わってきます。
犬にショックを与える無駄吠え防止首輪を使用しないでください
世の中には酷い無駄吠え防止グッズがたくさんあります。
電気ショックを与えたり、犬の嫌がるニオイを出したりするものです。
これらがとても安易にあなたの悩みを解決するからといって、これらを使用しないでください。
犬に苦痛を与えて吠えることを辞めさせたりすることは、犬の感情を強力にねじ曲げてしまいます。
これらのグッズを使用することで起こる問題行動は、使用する前にあった問題行動よりももっと強力で、解決するのが困難になる可能性があります。
犬との関係は信頼でこそ良くなります。
そのためにはあなたは根気強く相棒と対峙し、相棒の健康と安全のためにしっかりと相棒を観察し、勉強することを怠ってはいけません。
あなたの犬は、あなたに酷い目にあわされるためにあなたに出会ったのではありませんし、あなたも、酷い目に合わせるために犬を飼い始めたわけではないはずです。