老犬の夜鳴き(夜泣き)は飼い主さんを最も疲弊させる大きな問題です。
そして老犬の夜鳴きをきちんと対策する事で、辛いと感じていた老犬介護は、暖かくかけがえのないものになります。
逆に、この老犬が夜鳴きをするという問題をきちんと対策しなければ、飼い主さんに後悔をもたらし、幸せな老犬介護を全うする事ができなくなります。
それは愛犬にとっても飼い主さんにとってもたいへん不幸な事です。
相棒との大切な思い出を全て崩してしまうことになり、本来ならば後々、飼い主さんに光をもたらすはずの思い出を灰色に染めてしまうのです。
睡眠不足は脳に大変な負担をかけ、人間のパフォーマンスを著しく低下させます。
思考力が低下している上に、易怒性(怒りっぽさ)も現れ、飼い主さんの判断が最悪の結果を生む可能性も少なくありません。
老犬の夜鳴きは必ず飼い主さんを睡眠不足にします。
イライラしたり、気持ちが落ち込んだりしてしまい、酷い場合はうつを発症したりしてしまいます。
老犬介護をしている飼い主さんには誰でも降りかかる可能性のある問題です。
老犬の夜鳴きの問題にきちんと向き合い、対策していくことは、つまり、大切な相棒に理想の最期を迎えさせるために必要な、飼い主さんへのケアでもあるのです。
- 鳴き方で判断する老犬の夜鳴き(夜泣き)の原因
- 要求吠えによる老犬の夜鳴き(夜泣き)
- 老犬の不安からくる夜鳴き(夜泣き)
- 老犬の認知症による夜鳴き(夜泣き)
- 老犬の夜鳴き(夜泣き)を物理的に対策する
- 老犬ホームという選択肢
- 老犬介護を全うする〜人間もいつかは老いるのだから〜
鳴き方で判断する老犬の夜鳴き(夜泣き)の原因
老犬の夜鳴き(夜泣き)には大きく分けて二種類あります。
- 飼い主さん側の努力で軽減される夜鳴き(夜泣き)
- 飼い主さんではどうにもできない夜鳴き(夜泣き)
1は飼い主さんの介護でどうにかできますが、2はどうにもなりません。
獣医さんなどの専門家の知恵を借りたり、薬などに頼る必要が出てきます。
この2種類は、鳴き方である程度の判別ができます。
1の場合は、意識しなければとても不規則に起こります。
そして観察すると、鳴いている時の犬に表情が伴います。
子犬の頃の要求吠えと似ています。
不快感であったり、して欲しい事、やりたい事、怒りや寂しさから吠えているという吠え方だからです。
老犬になると易怒性も高くなり、身体も動かし辛くなるので、要求吠えをしなかった犬も吠えやすくなります。
1の夜鳴きの場合、飼い主さんによっては、考えずともすぐに対処できる場合も多いかもしれません。
逆にいままでそんな事で鳴かなかったのにととまどうかもしれません。
ところが、2の場合は、とても規則的に繰り返されるという特徴があります。
表情も変わらない場合がほとんどです。
一種の発作なので、なにかしらのスイッチがある場合が多いです。
気圧の変動や急な気温の変化などで発作のように吠えるのです。
人間でいうと認知症の症状で、脳機能のバグなので、飼い主さんだけではどうにもなりません。
かかりつけの獣医さんなど、専門家に早めに相談しなければなりません。
薬やサプリメントで対応することがほとんどですが、体力の弱った老犬なので、使用する判断は飼い主さんに委ねられます。
考える時間が少ないと、飼い主さんに睡眠不足や疲労が重なり、後悔しない判断がしづらくなるので、早めに相談する事が大事です。
要求吠えによる老犬の夜鳴き(夜泣き)
なぜか犬と長く暮らしていると忘れてしまいがちなのが「犬は吠える」ということです。
犬が吠える殆どの状況は、何かを要求したり訴えたりする時です。
犬と暮らす場合は、吠えるに至る前に、飼い主さんが相棒の欲求を満足させてあげるという事で、「無駄吠え」を防止します。
ここで立ち戻りたいのは、老犬の夜鳴きは「犬が吠える」ということと違うものではないという事です。
当たり前のようですが、相棒に愛情を注ぎ、とても良い犬に育ち、最期を迎えようとしている場合、この事実を何故か我々飼い主は忘れがちなのです。
老犬介護による疲れは、「終生飼養」という、日本で犬と暮らす大原則に、大きな影を落とす原因です。
特に老犬による夜鳴き(夜泣き)は、愛犬を手放すという、本来ならばあり得ない選択肢を、飼い主さんに選ばせてしまいかねない大問題です。
適切に対処しなければなりません。
ですが、多くの飼い主さんが、「犬の習性」というこれまた大原則を失念してしまいがちです。
夜鳴きをする老犬が、足腰が弱って動けなかったり、食事や給水に問題があったり、排泄に問題があったりした場合、その夜鳴きは、老犬の要求を伝えるための必死の訴えなのかもしれません。
また、飼い主さんは長年の相棒に対して理解が深すぎるがゆえに、思い込みをしてしまいます。
自分の愛犬は歳を取り、状況がすっかり変わっています。
その事もしっかり考慮に入れて夜鳴きに向き合っていく事が大切です。
まずは、「夜鳴き」も「吠える」という事と殆ど変わりがないという事から、老犬の夜鳴きの対策を考えていきましょう。
空腹や喉の渇きを訴える老犬の夜鳴き
要求吠えで一番に思い浮かぶのは「空腹」と「喉の渇き」に対する要求です。
「お腹が空いたよ」とか「喉が渇いたよ」と飼い主さんに訴えているのです。
若い犬でもよくある事です。
老犬介護が必要になるまで犬と暮らした飼い主さんであれば、うまく対処できるでしょう。
しかし、老犬になると、食事のタイミングや水分補給のタイミングが変化してきます。
人間と同じで、唾液の分泌量が減り、空腹や喉の渇きを感じるタイミングが若い頃と変わるのです。
それを留意しなければなりません。
若い犬であれば、基本的に食事の回数を増やす事で対処する場合が多いのですが、夜中に空腹を訴える場合、夜中に起きて飼い主さんが食事を用意するというのは本末転倒ですので、食事時間などを工夫する必要があります。
認知症で空腹を訴える場合もありますので、その場合はかかりつけの獣医さんと相談の上、対処方法を考えていきます。
いずれにせよ、最初から認知症と決めつけない事、若い頃と生活リズムが変わっている事をきちんと理解した上で、食事のタイミングを変えたり、回数を増やしたりしてみましょう。
要求吠えの場合は、吠える前に要求を叶える事で、吠えなくても飼い主さんは自分の要求に答えてくれるとしっかりと愛犬にわかってもらう事が大切です。
排泄を訴える老犬の夜鳴き
排泄の関係による要求吠えもまた老犬の夜鳴きの要因として多いものです。
特に足腰の立たない老犬は排泄したいという訴えをするという状況が増えます。
オムツをしていればいいやと考えがちですが、犬はとにかく自分の決めた場所で排泄したがります。
老犬になって足腰が立たなくなってもこの掟を頑なに守りたがる犬も少なくありません。
オムツで排泄の失敗の対処はできても、愛犬の気持ちの問題は解決できないのです。
尿意や便意を催して吠える場合は、可能ならば、速やかに犬の慣れた排泄場所やトイレに連れて行きます。
犬の介護をする場合は、老化が早急に進みます。
出来るだけ自立した生活を保つ介護とほぼ同時進行で、これが最期かもしれないというターミナルケアが必要になります。
最期まで自分の決めた場所で排泄をしたいという老犬の欲求を叶えてあげる事は、とても大切な事です。
中には強制排尿や強制排便が必要な場合があります。
犬の場合、人間と違ってこれらは医療行為で禁じられているものではありません。
かかりつけの獣医さんと相談の上、必要ならば強制排尿や強制排便を行い、他の感染症や消化器系の病気にならないケアも必要です。
大型の犬と暮らす場合、排泄のために寝たきりの犬を移動するのはとても大変な事です。
まだ愛犬が歩けるうちから家族の協力を仰いでおく事も必要な事です。
居心地の悪さを訴える老犬の夜鳴き
老犬は居心地が悪くても夜鳴き(夜泣き)します。
特に寝たきりの老犬の場合、居心地の悪さは、多くの場合痛みを伴う事があります。
老犬が寝たきりになってしまうと、自分で少し身体を動かす事も困難になり、必ず飼い主さんの手を借りる事になるのです。
居心地の悪さで夜鳴きをする場合、放置すると褥瘡(床ずれ)を起こしてしまう場合があるので注意が必要です。
犬の褥瘡(床擦れ)を予防する事は、大変緊急性のある問題で、褥瘡(床ずれ)は本当にあっという間にできてしまいます。
数時間起きに……必要であれば数十分おきに、体勢を変えてあげなければ、褥瘡(床ずれ)を起こしてしまう場合があるのですが、褥瘡はできてしまうと手当がなかなかに大変です。
体圧分散マットレスなどを使用し、体位変換の回数を減らしながら、褥瘡を起こさないように工夫することが、結果的に飼い主さんの負担を減らす事になりますし、夜鳴きの防止にも繋がります。
また、寝たきりの老犬の場合、排泄などで寝床が不快な場合も夜鳴きをします。
飼い主さんの睡眠前に、寝床を快適に整えてあげる事を強くおすすめします。
身体の負担を減らし、寝床を快適に保つ事で、夜鳴きが減少する場合がありますので、もしも、居心地の悪さで夜鳴きをする疑いがある場合は、寝床を見直して、寝具の交換や夜中にできるだけ清潔の保てる工夫をしてみてください。
老犬の訴えに適切に応えてあげる
我々飼い主は人間ですので、案外、我が相棒たちの要求に答えてあげる事はできていないかもしれません。
それでも、多くの愛すべき犬たちは仕方ないなあと、健気に我慢して人間たちに付き合ってくれています。
若い頃からそうやって健気に人間に合わせてくれた犬たちの最期の時間くらいは、できうるかぎりの要求に答えてあげたいものです。
鳴く、吠えるといった行動は犬の最終手段のようなものなので、そうなる前に要求に応えてあげるというのは、子犬の時からとても大切な事です。
老犬になり、寝たきりになると、要求も変わって来ますし、認知症のような症状もあらわれ、子犬の頃と同じようにはいきません。
飼い主さんにとってはいつまでも子犬のままなのですが、愛犬は年齢をとり、すでに老犬です。
思い込みではなく、確実に愛犬の要求に応えられる事を目指したいものです。
それができなければ、犬は吠えます。
当然です。
ほかに意思を伝える術を持っていないのですから。
要求吠えで夜鳴きする場合は、出来るだけ的確に、できれば吠えてしまう前に、愛犬の要求に答えましょう。
そのためには、飼い主さんが睡眠不足で判断が鈍っていてはいけません。
この負の連鎖が一番良くありません。
家族の協力を得て、飼い主さんもしっかり休みましょう。
老犬の不安からくる夜鳴き(夜泣き)
我々は忘れがちですが犬にとっての幸せの一番は、飼い主さんと共に居る事です。
犬にとっては飼い主さんの傍は安全圏で、冒険をしても、不安な事があれば飼い主さんの元へ駆け寄ります。
そして、飼い主さんの姿が見えなくなると不安は増し、飼い主さんの姿を必死で探します。
ドッグランなどで良くある風景です。
老犬になると、色々な機能に不具合が出ます。
目が見えなくなったり、鼻が効かなくなったり、耳が聞こえづらくなったりです。
老化によるこれらの機能障害は、進行を遅らせる事は可能ですが、完治させることは難しい問題です。
愛犬がそうなった場合、とても不安だと思います。
薄れゆく飼い主さんの姿、薄れゆく飼い主さんの匂い、薄れゆく飼い主さんの声。
不安いっぱいの生活の中、飼い主さんの気配を突然見失ったらどうでしょう。
痛みもなく、認知症の症状もないはずなのに、キャンキャンと高い声で夜鳴き(夜泣き)する場合、不安からくる夜鳴き(夜泣き)である事が多くあります。
夜中に目覚め、急に飼い主さんの気配を見失い、とても不安になって飼い主さんを呼ぶのです。
寝たきりであれば、自分の足で立ち上がり、飼い主さんを探す事もできません。
不安はさらに増す事でしょう。
まぐろさんの場合は、寝たきりになってから、夜は母ちゃんがお風呂に行く以外はいつも傍に居ました。
顔を上げて不安そうな表情をしたら、そっと撫でてあげるというのを繰り返していました。
不安で夜鳴き(夜泣き)をする場合、飼い主さんが声をかけながら、そっと触れると、老犬は確実に安心してまた眠りにつきます。
目が見えない場合は、急に触るとびっくりする事もあるので、できるだけ優しく声をかけながら触ります。
老化による身体の衰え
このブログでもよく話題に取り上げますが、犬は「どうしてか?」というのがわかりません。
足が思うように動かなくなって、自分が立てなくなっても、「どうしてか?」はわからないのです。
ですから、老化による身体の不具合は直接不安に繋がります。
若い頃はそれでもなにかと適応できた事も、老犬になると適応できなくなります。
やがて目が見え辛くなり、耳が聞こえ辛くなり、鼻が効かなくなります。
老化です。
老化による身体の衰えは、犬も人間も変わりません。
けれど、人間は、自分の身体の衰えの理由を知る事ができ、それによって自分の状態を把握し、受け入れようと努力できます。
犬には「どうしてか?」がわからないので、この過程がすっぽり抜けてしまうのです。
前庭疾患などの早期でも発症する病気以外で老化による身体の衰えを一番に感じるのは犬の場合、視覚です。
犬はあまり視覚を頼りにしていないとは言われていますが、やはり、視覚はとても大事です。
散歩中に渡れていた川が急に渡れなくなったり、小さな段差で躓いたりすることが徐々に増えていきます。
そんな時、不安でクンクンと小さな鳴き声をあげる事があると思いますが、それのもっと進んだ症状が夜鳴き(夜泣き)に繋がるのです。
目が覚めて飼い主さんの姿が見えない、声が聞こえない、匂いが薄いなどで不安になり鳴きはじめるというのがパターンとしては多いようです。
老化で身体が衰えても、犬にはそれが「どうしてか?」がわかりません。
飼い主さんの姿が見えない理由がわからないので不安は募るばかりなのです。
飼い主さんの声が聞こえないのがどうしてかがわからないから不安で仕方ないのです。
犬はいつも飼い主といっしょにいたい
老化で身体機能が衰えて来ると、易怒性(怒りっぽさ)が強くなりますが、それを助長させるのが「不安」です。
不安は、夜鳴き(夜泣き)の大きな要因の一つです。
犬は不安な事があると飼い主さんの傍に居ようとします。
飼い主さんの傍は、愛犬にとっては安全圏です。
信頼関係がしっかり築けていると、犬はそういう行動を必ず取ります。
人間の赤ちゃんが保護者を起点にして行動範囲を広げて成長するのと似ています。
信頼関係が強く、この関係性をしっかり保った状態の老犬介護はとても多いと思います。
足腰が立たなくなり、夜鳴き(夜泣き)に悩まされるほど、愛犬を大切に育てるという事だからです。
すごく簡単に感情的に言うと、夜中に目が覚めて色々な事に不安を感じた時、自分の力で飼い主さんのところに行けないから飼い主さんを呼ぶ。
飼い主さんの傍で安心したいがための夜鳴き(夜泣き)です。
犬はいつも飼い主さんといっしょに居たいのです。
それが犬の幸せです。
1秒たりとも飼い主さんと離れたくないのが犬の本音です。
不安で夜鳴きをする場合は、住環境を整備して、夜も愛犬と触れ合い、飼い主さんと愛犬が安心して寝られるように工夫すると、夜鳴きが改善される場合があります。
最期の時間くらいは、犬のわがままを聞いてあげても良いのでは無いかと個人的には考えています。
老犬の認知症による夜鳴き(夜泣き)
高齢化が進むと犬も認知症を発症することが分かって来ました。
多くの認知症の症状の中で特に夜鳴きに関係の深いものが昼夜逆転と単調な吠えの繰り返しです。
認知症で吠える場合、前庭疾患と相まって単調で感情のない繰り返しの鳴き方が多く見られます。
認知症での夜鳴きが疑われる場合、かかりつけの信頼できる獣医さんに相談します。
お薬などで治るものではありませんが、認知症で夜鳴きする場合は飼い主さんの愛情だけではどうにもできません。
酷くて飼い主さんが睡眠不足に陥った場合は、サプリメントで症状を緩和させたり、お医者さんに相談するのが一番です。
犬の鳴き方を録画して獣医さんに見ていただき、認知症の診断を受けたら、飼い主さん側の状態や生活を説明し、どのような対処が良いのか相談するのが一番です。
老犬は身体が弱っていますので、睡眠薬やサプリメントでも一歩間違えればそのまま目を覚さない事もあり得ます。
また、危険の少ないサプリメントなどですと、全く効果が感じられない事も多々あるのです。
普段から、相談レベルで信頼できるかかりつけの獣医さんを探しておく事はとても大切です。
昼夜逆転してしまった場合、一番良いのは離床させて少しでも身体を動かせ、太陽の光を浴びてもらうことです。
セロトニンの分泌量が足りないと昼夜逆転しがちなので、太陽の光を浴びてもらいます。
これで昼夜逆転が改善する場合もあります。
いずれにせよ、認知症で夜鳴きする場合、夜鳴きを止める方法はなかなかに難しいものです。
飼い主さんが睡眠不足になる前に、防音など物理的な方法での対応をお勧めします。
老犬の夜鳴き(夜泣き)を物理的に対策する
老犬の夜鳴き(夜泣き)は犬が鳴くという行動をコントロールしてある程度軽減できても、やはり鳴く時は鳴きますし、認知症などで鳴く場合は、ご近所や同居人に気を使い、ストレスは倍増してしまいます。
前庭疾患などによる夜鳴きは、気圧などにも影響を受けます。
ある程度の予算が取れる場合は、物理的に「音」を軽減する方法もあると頭に入れておきたいものです。
本来であれば、子犬の時から外に漏れる音を軽減した室内で育てるのが理想ですが、老犬になってから物理的な防音対策をする事は可能です。
但し、最初から防音施工された家屋でなければ、完璧な消音はできません。
それでも、犬の夜鳴きを軽減する方法はありますので、飼い主さんの予算、状況と犬の年齢や状態を加味して、老犬を世話する空間事態を防音することで、飼い主さんのストレスを軽減する事はできるでしょう。
夜鳴きに対して防音対策を試みてもあまり効果が無かったという飼い主さんにも時々出会いますが、そもそも音のしくみを考慮しなければ防音対策はできません。
我々は「音は空気の振動である」ということを失念しがちです。
音は空気の振動なので、その振動を止めなければ防音はできません。
けれども、空気の振動は物質を振動させます。
その共振が音漏れの原因なので、何かの防音材をひとつ置いたくらいでは音は止まらないのです。
この事を頭に置いた上で防音対策の方法を選んでください。
防音の方法には主に3つの方法があげられます。
-
夜鳴きの騒音を軽減するために防音対策されたケージや犬小屋を使用する
-
防音シートや吸音シートを組み合わせて老犬の夜鳴きの騒音を対策する
-
夜鳴きする老犬を防音室で世話する
夜鳴きの騒音を軽減するために防音対策されたケージや犬小屋を使用する
金銭的な余裕があり、愛犬のサイズがそれほど大きくないのであれば、既製の防音対策の施された犬小屋を使用して、老犬の夜鳴き(夜泣き)の騒音を軽減するという方法があります。
値段はピンキリですが、防音対策された犬小屋やケージカバーが市販されています。
これらを使用することで、夜鳴きによる騒音がかなり軽減されます。
但し、布を被せるタイプのものは、防音というよりも布を被せる事によって犬を落ち着かせ、吠える事自体を軽減するものがほとんどなので、老犬……特に認知症で夜鳴きする場合にはあまり効果は期待できません。
しっかりと防音室のように機能する犬小屋やケージカバーを選択するほうが良いでしょう。
ネット上で調べられる防音対策の施された犬小屋またはケージカバーは、概ね防音に対しては文句なしのようです。
トラブルのほとんどは配送やキャンセル代などのようですので、事前にしっかりと確認しておく事が必要です。
また、愛犬のサイズをしっかりと把握して、お世話をするシミュレーションをしてから購入しましょう。
換気システムに微量の音が入るようですので、音に敏感な犬はストレスになるかもしれません。
その辺りも注意が必要です。
防音対策の施された犬小屋やケージカバーは、最近ではレンタルのモノや中古のモノも出回っているようです。
いずれにせよ、飼い主さんの老犬介護の大きな負担である夜鳴き(夜泣き)に関して大きな解決策であることは間違いありません。
KAWAIのワンだぁルーム
実は音の専門家が作った防音対策に特化した犬小屋が市販されています。
それが「ワンだぁルーム」です。
カワイ楽器が作った犬小屋です。
サイズはシバ犬では少し小さいようですが、小柄な子であれば大丈夫なようです。
音の専門家ですので防音のしくみを熟知していて、全く聞こえなくなるわけではないですが、かなりの騒音軽減になるようです。
人間用の防音室のしくみを簡素化しているのでコスパはかなり良いと思います。
サイズがぴったり来ないというのが難点なようですが、換気のシステムもあり、優れた製品のようです。
楽天でもご購入いただけるようです。 |
防音ケージカバーKハウス
少し大きめで介護がしやすい防音対策のされた犬小屋が防音ケージカバー5という製品です。
犬小屋製作工房K - 手作りのオーダーメイドな犬小屋 製作・販売中 犬小屋のことは、オレに任せろ
こちらの個人工房の方が制作されたケージカバーのようです。
お客様の声を聞いて何度も改良されるこだわりの工房さんのようで口コミのトラブルは親切の行き過ぎといった印象を受けました。
クチコミは概ね良好で、防音の方もかなり良質なようです。
お客様の声を聞いて何度も改良されるので、介護しやすいような工夫もみられます。
楽天の方ではサイズは一種類だけのようですが、工房のサイトには何種類かあるようです。
ただ天然木を使用したケージカバーなので、重量がかなりあるらしく、女性一人の組み立ては少し大変かもしれません。
何度も改良されるようなので品切れやリンク切れがあるかもしれません。
オーダーメイド工房
防音犬小屋・ケージのオーダーメイド工房さんでは、愛犬のサイズに合わせた3種類のセミオーダーメイドのほかに、フルオーダーメイドも受付ているようです。
セミオーダーの商品は15キロの愛犬まで対応できるようです。
やはり少し値段がはりますが、こだわりのある方であればこちらのフルオーダーが良いかもしれません。
お値段の高いものなのでしっかりと調べた上でのご購入をオススメします。
防音シートや吸音シートを組み合わせて老犬の夜鳴きの騒音を対策する
どうしても防音対策をされた犬小屋が使えない事情がある場合、遮音カーテンや遮音材などで、防音するという手があります。
けれども、これは本当に緊急措置的なものであって、素人が防音施工をしても、あまり効果のないものがほとんどです。
うちの家は、前の仕事が音の専門家であったため、その職場から頂いた遮音カーテンを使用していますが、全くといっていいほど遮音の役目は果たしていません。
音は空気の振動ですから、遮音材だけで止まるなんて事はまずありません。
壁や床、窓ガラスなどが共鳴し、揺れてしまう限りは音漏れというのはしてしまうのです。
とはいえ、ある程度空気の振動を変えたり、反射させたり、共鳴しないように工夫したりする事で、防音する事は可能です。
完璧とは言い難いですが、騒音レベルを低減するというのはできます。
騒音というのは人間の感覚ですから、体感レベルで問題になる事がほとんどです。
冷蔵庫のモーターが回る音でさえ、気になる時は気になってしまいます。
音が数値的にほんの少し小さくなっただけで、ものすごく静かになったと感じることもあります。
犬の夜鳴きでとても困った場合は、遮音材や吸音材をうまく組み合わせて使用することで、体感の音量レベルが下がる事もあるのです。
防音のしくみ
音は空気の振動ですから、何かモノを立てたりしたからといって完全になくなるものではありません。
音は色々なモノに共鳴し、他のモノを振るわせることで遠くに届いたり、高さを変えたりします。
いわゆる「遮音」とは、この空気の振動を跳ね返えらせ、外に振動させないというものです。
跳ね返った振動は、方向と周波数を変えますが、まだ残っています。
その跳ね返って方向を変えた振動を吸収するのは、あまり振動しない物質です。
柔らかいものは振動を吸収しやすいものが多いです。
我々の耳に届く音は、色々な周波数が縄のようによりあっています。
特定の一本の音がまっすぐに飛んでいくイメージがありますが、実はそうではありません。
物質は基本的に吸収する周波数と共鳴する周波数があるので、完全に音を消音するためには、いくつもの違う物質を使って吸収していくしかありません。
さらに、モノとモノが触れていると振動が伝わってしまうので、その物質と物質にある程度の空間が必要になります。
本格的な防音対策にはこの方法がとられるのでとても大変です。
壁材にグラスウールなどを巻きつけると防音できるのはこのためですが、躯体を伝わる周波数(主に低い周波数)はこれでは止まりません。
カーペットの下に直接遮音シートを敷いても音が止まらない事が多いのはこのためです。
遮音シートと吸音材を組み合わせる
完全な防音にはなりませんが、遮音シートと吸音材を併用する事で、多少の防音効果はあります。
犬のいる部屋のカーテンを遮音カーテンに変える事でも多少の防音効果にはなるので、遮音カーテンも併用するとなお良いでしょう。
吸音材に遮音シートを貼り付けると防音効果は多少上がります。
また、ダンボールなどの柔らかい素材も防音効果のある素材ですので組み合わせると良いかもしれません。
防音効果の高い素材は、だいたいが熱がこもってしまいます。
気温の管理も、体温調整の鈍った老犬にはとても大切な事です。
換気のできる工夫もかかせません。
防振ゴムなど振動を吸収するものを芯にしてスポンジのような柔らかい素材で挟み、遮音シートを貼り付けると、防音効果は高まります。
夜鳴きする老犬を防音室で世話する
最近ではテレワークが多かったり、趣味で動画配信をする人が増えてきて、以前よりも「防音室」というものが一般にも普及してきました。
人間用の防音室です。
老犬の夜鳴きであれば、無音は無理にしても他の手段よりもかなりの防音効果が見込めます。
ここで言う防音室とは、部屋自体を防音施工するのではなく、部屋に防音室を持ち込むタイプの防音室です。
部屋の中にもう一部屋作るというイメージです。
広さは使用用途に合わせてピンキリです。
そして値段や防音効果もピンキリです。もともと防音室を持っている方であれば、一時、夜鳴きする老犬をその防音室の中でお世話するという手があります。
ピアノなど大型の楽器を練習するための防音室であれば、充分な広さですが、値段もそれなりなので、楽器の練習やテレワークなど人間の活動と併用できる事が望ましいかもしれません。
いずれにせよ、ある程度生活に余裕のある人でないと難しいです。
こちらのサイトなどで色々調べてみる事をオススメします。
私は前職でこの防音室を使用する仕事についていましたが、一定のクォリティがあれば防音効果は間違いないです。
ただし、防音室は目の届く場所ではなくなるので、まめに観察できる人に限られます。
また、最近ではダンボールを利用した簡易な防音室も販売されていて、完全防音とはいかないまでも、軽減率が高く、コスパの良い防音室があるようです。
老犬ホームという選択肢
犬も人間と同じように年齢を重ねればあちこちに不具合が出ます。
犬と共に暮らすという事は、いつか来る別れを理想的に迎えるという事です。
その理想というのは、飼い主さんのためではなく、飼い主さんが犬のために必死で考えた理想でなければなりません。
犬は最期の瞬間まで飼い主さんといっしょに居る事が幸せです。
それをどうやったら叶えられるのか、死ぬ気で考えなければなりません。
「終生飼養」というのは、そういう事です。
けれども、特に認知症による夜鳴きの問題は、いくら飼い主さんが、素晴らしい方であろうともどうにもならない事もあります。
飼い主さんが疲弊し、どうしようもなくなった時、本当に最期の砦として、老犬ホームという選択肢があると私個人的には考えています。
安易に利用する人も増えているようですが、飼い主さん自身が、愛犬を看取る事ができるならそれが最優先です。
けれども、飼い主さんが愛犬の夜鳴きに疲弊し、睡眠不足で正しき判断ができなくなるような自体ならば、老犬ホームを利用する事も致し方ないと思います。
一部地域では、デイサービスのような預かりをしてくれる老犬ホームもあるようです。
睡眠不足で頭が回らなくなる前に、そういった良心的な施設を調べて利用を検討する事も、愛犬にとって頼れる最強の飼い主であり続けるためには必要な事ではないでしょうか。
こちらのサイトでお住まいの地域の老犬ホームのことが色々と調べられます。
老犬介護を全うする〜人間もいつかは老いるのだから〜
犬は人間社会で生きていかねばなりません。
愛犬の命運は飼い主さんの判断に委ねられます。
「終生飼養」という根本的なルールがあるにも関わらず、苦労をしいられる犬たちはまだまだ後を断ちません。
終生飼養という考えは、多くの犬に長寿をもたらしましたが、人間の高齢化に共ない、犬の高齢化も進みました。
犬の高齢化の問題は、人間の高齢化の問題と同じです。
介護離職や介護疲れなど、今までは犬の一部に見られたような事態が、多く見られます。
「終生飼養」には、老犬介護はつきものです。
我々人間も必ず老いるように、犬たちも必ず老いていくのですから。
共に歩んで来た犬たちだからこそ、高齢化が進んだ今、老犬の尊厳を守り、満足のゆく終末期を過ごして貰おうという努力が必要なのではないでしょうか。
もちろん、愛犬との別れの時、飼い主さんが後悔する材料をひとつでも減らすという事も考えなければなりません。
それは、愛犬の満足のゆく終末にも繋がります。
人間の介護を考えると同時に、我々愛犬家は、犬の介護の事も考えなければなりません。
犬の家族は我々人間であり、犬は人間社会に生まれ、人間社会で老いて終末を迎えます。
後悔の少ない介護をし、愛犬との大切な思い出を抱えた人たちが人間社会に増えれば、愛すべき犬たちの幸せにも繋がると私は信じています。