「吠えない犬がいいね」
譲渡会に行くと良くそういう話を耳にします。
実際、うちのまぐろさんの面倒を母ちゃんの留守の時などにしてくれた後見人の方も言っていました。
「まぐろさんは吠えない犬だったね」
しかし、世の中に吠えない犬など居ません。
これが母ちゃんの見解です。
みなさんの言っているのはいわゆる、「無駄吠え」だと思います。
しかし残念ながら、世の中には最初から人間の言う「無駄吠え」をしない犬などいません。
犬が吠えるのには理由があって、人間にとっては「無駄」でも犬にとっては「必要なこと」だからです。
犬は言葉を持ちません。
吠えて意思表示をしなければ危険などを回避したり、緊急の要求を伝えたりすることができません。
しかし、人間社会では無闇やたらと身勝手な騒音をたててはいけない事になっています。
だからやかましく吠えたてると、飼い主さんは困ってしまいます。
「無駄吠え」は多くの飼い主さんの悩みのひとつです。
そのすれ違いが、「無駄吠え」を生んでいることは明白です。
犬は吠えるものです。
母ちゃんの認識はそうです。
では何故、まぐろさんは「無駄吠え」がなかったのでしょうか。
犬は吠えるもの
前述したように、母ちゃんは最初から「犬は吠えるもの」だと認識しています。
犬は吠えて意思表示をしたり危険を回避したりするものです。
それが紛れも無い事実で、この事実は決して曲げる事はできません。
それを認識することで、「吠えたら叱る」という行為がなんともバカげたナンセンスなことだと言うことが理解できます。
だって犬は吠える生き物だから。
それは、人間に喋ったから叱るという事と同じくらいバカげています。
だからと言って、「吠える」ことを放置して「無駄吠え」なんかないよ!と言っていたわけではありません。
母ちゃんは人間で、人間社会で生きていて、まぐろさんは母ちゃんの生きる人間社会で生きていかなければならないからです。
残念ながら母ちゃんは人間社会のルールをフル無視して生きられるほど強くはありませんでした。
犬は何故吠えるのか
犬であるまぐろさんは吠える生き物です。
ではどんな時に吠えるのでしょう。
吠えるという事にどんな意味があるのでしょう。
人間社会の「無闇やたらとうるさくしてはいけない」というルールに従って、犬に本来やらなければいけない「吠える」という行為を辞めて貰おうとする場合、まず、それを知る事が肝要であると思います。
幸いな事に、先代のいっしょに暮らしていた犬たちによって、「犬という生き物がどんな時に吠えるのか」という事は、母ちゃんにはだいたいわかっていました。
- 自分のお家や家族を守るため
- 何かやって欲しいことがある
- どこか身体に異変がある
主にこの三つのどれかです。
そう考えると、犬が本来吠えるという行為がどんなに大切かわかると思います。
あなたがある日突然言葉を失って、足が痛いと思った時、家族が自分に意識が向いてなければ、どうするかを考えれば、ものすごく簡単に想像できると思います。
今まさに、自分たち家族に危害を加えようとしているかもしれない不審な人物が立っている時、あなたは「危ない」と叫んでしまうかもしれません。
家族がそれでもヘラヘラとその不審な人物に近づいていった場合、「危ない!危ないよ!」と繰り返すかもしれません。
足が痛いと訴えた時、危ない!と危険を知らせた時、お腹が空いたよと要求した時、もしもあなたがこっぴどく叱られ、あまつさえ暴力を振るわれたりしたらどのように感じますか?
自分の事を理解しない、注目もしない、自分の意思を伝えようとしただけで、キーキー怒るような上司、母親、父親を信頼し、尊敬し、リーダーとして認めることができるでしょうか?
もちろん、このブログを読んでいる読者の人たちはみんな、そんなつもりで最初から叱る人も滅多にいないし、愛犬を心から愛している人ばかりだと思っています。
けれども、「犬は吠えるもの」という前提で無駄吠えを考えるとき、それがふだんから認識できている人はぐんと数が減るような気がします。