まぐログ!全力犬暮らし

大切な相棒……老犬との愛しい最期のひととき

うちの愛犬が素晴らしい犬になったわけ〜犬を「しつけ」てはいけない理由

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相手がなぜそういう行動に出てしまったのかを知ろうとすることで解決することはまだまだたくさんあります。

我々、犬の飼い主は、時々、相棒が「犬」であるという事実を忘れてしまいます。

それは父親が子供の事を子供だと忘れてしまうのと似ています。

父は忘れるという文章があります。

これは私が心のバイブルとしている人を動かすという本に引用されている名文です。

相手を非難する変わりに、相手の事をよく知り、どういうわけで相手がそんな事をしでかすに至ったか考えようというのを、とてもうまく説明した名文です。

これは犬と暮らす場合でも全く同様であると、私は思います。

我々は何故か犬を人間のように考え、吠えたり咬んだり、走り回ったり、トイレでないところで排泄したりすることを、あってはならない事として扱ってしまいがちです。

あってはならない事だと捉えてしまうと、叱るという事をしてしまいます。

けれども相手は犬なのです。

善良で情け深く、愛に満ち溢れ、我々人間に対する好意を惜しみなく体中で表現しますが、彼らは「犬」です。

人間のようにトイレに行くのが当たり前ではありませんし、役職を大切に思う事もありません。

自分が危険に晒されていると思えば攻撃的にもなります。

私とて、たくさんの失敗をして今に至るわけですが、まぐろさんは根気よく、私に色々な事を教えてくれました。

 

しつけ本の中の犬なんて居ない

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まぐろさんがうちに来た時、母ちゃんは既にたくさんの犬と暮らした経験を持っていました。

私は既に先代犬たちから犬と暮らす術をたくさん学んでいました。そのはずでした。

違っていたのは環境です。

何度も書いて来たように、私の犬を飼う事に関する人間の師匠はうちの父です。

まぐろさんがうちに来た時、私は一人暮らし。

そう、父が居なかったのです。

そして長い事、犬と暮らすということから離れていました。

まぐろさんはオスワリもマッテもすぐに覚えましたし、トイレもすぐに覚えてしまいました。

母ちゃんはその後少し迷ってしまったのです。

うちの先代犬たちは、ほとんどが父ちゃんと狩りに行くという役割があったので、その後も色々覚えて貰うことはありました。

でも、まぐろさんは家庭犬としてうちにやってきました。

他に何を教えたらいいんだろう。

母ちゃんはしつけ本を何冊か購入しました。

今思えば、実はこの時、まぐろさんは人間と暮らすために犬が覚えなくてはいけない人間界の最低限のルールはほとんどクリアしていたのです。

ですから、母ちゃんがしつけ本を読んだ事は母ちゃんの勉強にはなりましたが、まぐろさんにはなんの意味もありませんでした。

母ちゃんは、しつけ本の中のバリバリに人間のいう事をきく犬を見ていました。

20年も前のしつけ本です。

今思えば、20年前のしつけ本の中の犬は犬ではありません。

しつけ本の中の犬をまぐろさんに投影した時、まぐろさんがどうなったか……。

そうです。

このブログを愛読いただいているみなさまならご存知の通り、立派な「破壊王」になってしまったのです。

いつも犬は「大好き」を伝えてくれる

さて破壊王であった頃のまぐろさんはとにかく次から次へと問題を起こしてくれました。

脱走してしまったこともあります。

母ちゃんは最初から良い飼い主であったわけではありません。

今思えば、最悪の飼い主でした。

うまくいかない事に苛立ち、悪い飼い主の見本のように「こんなはずじゃなかった」と考えてしまいました。

父に相談することも忘れ、とにかくしつけ本ばかりと睨めっこしながら、毎日毎日眉間にシワを寄せて暮らしていました。

育児ノイローゼです。

そして、ある日、まぐろさんは窓から外を覗こうとして窓枠にひっかかりました。

命の危険のあるかもしれぬ事なので母ちゃんは大激怒です。

半泣きでまぐろさんを叱り飛ばしました。

たぶんその日は1日まぐろさんの相手をしなかったのだと思います。

夜、台所で用事を済ませた後、部屋に戻ると、母ちゃんのベッドに掛け布団がありません。

おやおや。

当時から、まぐろさんの寝床は母ちゃんのベッドの下でしたので、まぐろさんはベッドの脇で申し訳なさそうにオスワリをしています。

実は、こんな申し訳なさそうなまぐろさんを母ちゃんはその時久々に見ました。

イタズラをした後でも、してやったりという顔をするのが常でしたから。

母ちゃんがふとまぐろさんの寝床の中を見ると、なんということでしょう。

どうやって突っ込んだのか未だに謎なのですが、母ちゃんの掛け布団がバラバラにされ、ぎゅうぎゅうに詰まっていたのです。

あまりに予想外のことに、母ちゃんの思考は一瞬停止しました。

後々考えてみると、これが良かったのです。

いつものヒステリーが起こる余裕もなかったんです。

思考停止から復活した後、母ちゃんの頭に一番に浮かんだのは、

「どうやって詰めたんだろう?」

でした。

それを想像するともうなんだか可笑しくて、じわじわと笑いがこみ上げてきまして、母ちゃんは爆笑してしまいました。

さっきまで情けない顔で申し訳なさそうに上目使いで母ちゃんをみていたまぐろさんは、爆笑する母ちゃんに顔を上げ、パタパタと遠慮がちに尻尾を動かしました。

それをみて母ちゃんに湧き上がったのは、「なんてかわいいんだろう。なんて愛しいんだろう」という感情でした。

母ちゃんは気付いてしまいました。

気付いたというか思い出したというか。

とにかく、犬がやることには何か理由があるということ。

犬にはそれぞれ個性があり、それが愛しいという気持ちを湧き上がらせるということ。

私が一緒に暮らしているのはしつけ本の中の犬ではなく、「まぐろさん」というおもしろい個性を持った唯一無二の犬であるということ。

母ちゃんが笑う顔をみて、さっきまで情けない顔でうなだれていたまぐろさんは、嬉しそうに尻尾を振っています。

「お前、母ちゃんを笑わせたかったのか?」

とにかく、まぐろさんは他にある壊せるものには目もくれず、母ちゃんのふだん使っている母ちゃんのニオイたっぷりの布団を寝床に詰め込みました。

真実がどうであれ、母ちゃんはそこから、まぐろさんの母ちゃん大好き!という気持ちをものすごく大量に受け取ることができました。

母ちゃんはまぐろさんを抱きしめてわんわん泣きました。

母ちゃんはそれ以来しつけ本と睨めっこするのをやめ、まぐろさんを観察することにしました。

犬が嫌がることをしないということ

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母ちゃんの口癖は、「どうしたの?」です。

まぐろさんがいつもと違うことをした時、まぐろさんが何か言いたそうな時、まぐろさんが表情を変えた時、空気が変わった時……。

最初の頃は、叱り飛ばしたい気持ちに駆られた時にその言葉を使うように意識していました。

「どうしたの?」

これは魔法の言葉です。

この言葉を使い始めてから、まぐろさんのイタズラは格段に減りました。

それどころか、まぐろさんは母ちゃんのお願いを聞いてくれるようになったのです。

例えば、玄関で足を拭く時、「足を出しなさい!」といって出した足を握りしめて引っ込めようとするのを無理矢理拭くのは、犬にとってはイヤな事ですが、「オテテちょうだい。ありがとう。足拭かせてね」と差し出された手を優しく拭くのはお願いです。

前者の時はまぐろさんは足を必死で引っ込めようとしますが、後者の時は、お願いを聞いてじっと我慢してくれます。

まぐろさんは、母ちゃんが「どうしたの?」といつも聞いてくれて、対処してくれるので、いざとなったらちゃんと助けてくれることを知っています。

まぐろさんは、母ちゃんが嫌な事をしないという事を知っているのです。

ですから、ちょっとイヤな事をするときは、お願いすると我慢してくれます。

この母ちゃんとまぐろさんの日常のやりとりは、しっかりと守られてきました。

そして、まぐろさんは天国に行こうとする時、「待って待って」といった母ちゃんのお願いでさえ聞いてくれてそれから3日も待ってくれました。

それはまぐろさんが、母ちゃんは自分のホントに嫌な事はすぐにやめてくれて、ちょっとだけイヤな事をする時は前もってお願いしてくれて、何かあれば飛んできてくれることを知っていたからだと思います。

この関係を成り立たせるためには犬の嫌がる事を把握しなければなりません。

犬の嫌がることを「嫌なんだな」と把握することは、飼い主自身がやって欲しいことが無理強いであることに気付くことができ、やって欲しいことをやってもらうための工夫もうまれます。

そもそも叱るということが自分の感情の爆発の場合が多く、相手がなぜそういう行動に至ったのかを考えれば感情的に叱り飛ばすことはあまりありません。

犬と飼い主さんの信頼関係を崩すことなく、人間社会でうまくやっていくルールを守ることができるのです。

なんと母ちゃんは、それをまぐろさんから教わったのでした。

人間のお願いを聞いてくれる犬たち

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不思議な事に、大人の人間はお願いを聞いてくれない場合が多々あります。

犬と比べてです。

その前に大人の人間は、なぜかイヤな事をイヤだと教えてくれません。

不思議です。

さらに大人の人間はイヤな事をイヤだといっているのに、イヤな事をやめてくれません。

人間同士であってもです。

犬は自分に被害が及ばなければ、暴力的になる事はほとんどありませんし、犬はとても優しいので、イヤな事は前もってイヤだと教えてくれます。

ですから、当然、お願いを聞いてくれます。

「それはイヤだからやめて!」

と自分が訴えるのですから、それが守られた場合、相手が「それはイヤだからやめて!」というお願いも聞き入れられる事がほとんどです。

これはコミニュケーションをとる上で最低限必要な約束だと思うのですが、人間社会ではこれが守られない場合が多くあるのです。

社会を形成する上でとても大切なルールのはずなのに、大人の人間はそれができない場合が多くあります。

社会というものを作る上で人間は一番発達した生き物だと勘違いしがちですが、実は犬のほうが社会化されているのかもしれません。

まだまだ犬から教えてもらうことはたくさんあります。