吠えるというのは犬にとっては、音声を使ったたくさんのコミュニケーションのひとつです。
犬と暮らす人間は、犬が吠えるのを喜ぶことが少なからずあります。
誰かが自分たちの家に近づいてくる事を警告したり、犬が自分のして欲しいことを知らせたり伝えたりするからです。
これは、犬が人間の友達としてこの世に生まれた瞬間からそうでした。
人間にとって好ましい吠えるという行為……その吠え声が過剰になる場合があります。
過剰になった吠えを人間は無駄吠えと呼び、その判断は時とともに変わって来ました。
犬のほうからすれば、その変化は人間側の都合ですが、相棒と幸せに暮らすために、人間はこれを解決する必要があります。
しかし、吠えるという事はさまざまな機能を持っているため、無駄吠えという問題を解決する前に、吠える原因と動機を特定する必要があります。
犬が無駄吠えをする原因を特定する
犬によって吠えるカタチは、それぞれ別の機能を持っています。
そして犬が吠える事によって繰り返し報酬を受け取っている場合、……言い方を変えれば、欲しいものが手に入った場合……犬は自分の利益のために吠えるという行動を使うことを学びます。
例えば、吠えることによって飼い主さんの気を引くことに成功した犬は、しばしば他の事でも吠えます。食べ物やおもちゃで遊んでもらうことや飼い主さんと散歩に行くことなどです。
このような理由の場合は、吠える代わりにオスワリやオテやマテなど、違うきっかけで、犬の欲しいものが手に入るように訓練することが重要です。
多くの飼い主さんは、自分の犬の一定の吠え声を聴くだけで、その理由を判断することができます。
例えば、庭から部屋に入りたい時と、もっと遊びたい時を比較すると犬の吠え声は違って聞こえます。
あなたが犬の無駄吠えを減らしたいのならば、相棒が何故吠えているのかを特定することがきわめて重要です。
あなたの相棒に無駄吠えをしないことを教えるのは時間がかかります。
残念ですが、その場しのぎの早急な解決方法や相棒に完全に吠えることをやめさせることに期待をするのは現実的とは言えません。
人間が突然、全く話さなくなるなんて思えますか?
あなたが目指すべきなのは、犬の無駄吠えを取り除くことよりもむしろ吠える量を減少させることです。
犬は吠えるモノなのですから。
犬種によっては、他の犬よりももっと吠える傾向にあるということを肝に命じてください。
その上、若干の犬種は、吠える事を仕事にするために繁殖され、そういった固有種は、無駄吠えを減らすことは他の犬種より難しくなる可能性があることも頭に入れてください。
犬が吠える理由
前述したように犬が吠えるのには理由があり、それによって生まれた過剰な無駄吠えを減少させる方法は違います。
縄張り意識による無駄吠え
犬は、飼い主さんと暮らす家に他の犬や誰かわからない他人や他の動物が侵略してきたと感じた時、縄張り意識として過剰に吠えることがあります。
あなたの生活圏だけでなく、あなたに強く結びついた場所やあなたが多くの時間を過ごす場所もその縄張りに含まれます。
相棒がこれに当て嵌まるという飼い主さんは以下の記事で詳しくみてください。
警報を意味する過剰な吠え
犬が吠える時、何かを欲しがったり注意を引いたりするためではなく、そういう文脈関係なく吠えているように感じる場合は、警報を意味する吠えかもしれません。
なんでもかんでも吠えてるように見えますが犬にとってはちゃんと理由があります。
縄張り意識で吠えるのと、環境は似ていますが、それとは違います。
この警報として吠えるという行動は人間の繁殖によって強化されてきたもので、問題行動としての過剰な吠えに繋がりやすいものです。
玄関で吠えてしまう犬には玄関で何かオモチャのようなものを咥えるということを教えると効果的かもしれません。
何かをくわえている間は犬は吠えることができませんから。
この吠えに関しての詳しくは下記の記事を読んでください。
要求吠えもしくは注目して欲しい時の無駄吠え
これはよくあるパターンの無駄吠えなのですが、何かが欲しいとか注目されたいとかという要求を伝えるために犬はよく吠えるという行動を使います。
この吠えは強化されやすく、過剰になりがちで、無駄吠えとして悩むことがもっとも多い吠えかもしれません。
もう少し詳しく書いた記事がありますので、こちらも読んでみてください。
挨拶を意味する吠え
身体的に緊張がなく、尻尾をふりながら興奮して誰か知り合いの人間や他の犬に吠える時、それは相棒が挨拶のために吠えているのかもしれません。
挨拶のために吠えている犬は、挨拶したい人間や犬に向かって吠えたり、くんくん鼻を鳴らしたりします。
挨拶のために吠えることは無駄吠えになりくいものですが、あまりにきちんと挨拶させてもらえない場合はエスカレートして無駄吠えに繋がる場合もあります。
きちんと犬の正しい挨拶を学んで飼い主さんが相棒の挨拶を邪魔しないようにしましょう。
詳しく書いた記事がありますのでそちらも読んで見てください。
欲求不満による無駄吠え
比較的吠えない犬でも、彼らがフラストレーションが溜まる環境に置かれたときにのみ、過剰に吠える犬がいます。
お散歩に行って遊んで欲しい犬と飼い主さんがなかなか遊ばせてくれなかったり、閉じ込められたり縛られたりして行動が制限された時などがよくある例でしょう。
とはいえ、それだけではなく、少し複雑な環境でも犬はフラストレーションをためてしまいます。
犬は禁止事項ばかり言われるとフラストレーションが溜まります。
これに関しても少し詳しく説明している記事がありますので読んでみてください。
何かにとりつかれたように吠える
壊れたレコードのように、あるいは何かにとりつかれたように、繰り返し過剰に吠える犬がいます。
このような吠え方をする犬はおまけに反復運動を繰り返します。
例えば、何かにとりつかれたように吠えている犬は、家や庭の塀に沿って吠えるのと同じペースで行ったり来たりします。
動物園のオリの中で反復運動を繰り返す猛獣によく似ています。
良心的な飼い主さんの元で育った犬のほとんどは、こういう吠え方に至るケースはほとんどありませんが、無駄吠えのしつけに失敗すると稀にこういう激しい無駄吠えに至る場合があります。
詳しく書いた記事がありますのでこんなことしないという犬の飼い主さんにも、是非とも読んで頂きたいと思います。
社会的な理由で促進される吠え
他の犬が吠えるのを聴いた時だけ過剰に吠える犬がいます。
この種の吠えは、近所の犬や少し距離の離れた他の犬の声を聴いた時の社会的な背景の中で起こります。
遠吠えなどが代表的ですが、過剰に吠えることもよくあります。
犬は社会的な生き物なので、このような無駄吠えを全く辞めさせるというのは現実的ではありません。
犬の吠え声が聴こえた場合は、何かで気を逸らすようにしてあげてください。
無駄吠えの原因になり得るその他の問題
内的な原因や一般的な原因以外でも犬は無駄吠えに至る可能性があります。
病気、あるいは怪我
犬は痛みや苦痛を伴う状態に応じて吠える場合があります。
無駄吠えの問題行動を解決する以前に、このような場合は早急に獣医に連れて行き、痛みや苦痛の原因を医学的に取り除いてあげてください。
分離不安で吠える
分離不安という心の病気で吠える犬がいます。
分離不安で吠える犬は飼い主さんが居なくなった時や長く放置された場合にのみ起こります。
分離不安は他の問題行動もともなう場合がほとんどです。
破壊行為や不適切な排泄などです。
分離不安で吠える場合は特別な対応が必要になります。
何故、無駄吠えしているのか
犬の無駄吠えを減らす第一歩は、犬が何故吠えているのかということをその吠えのタイプで特定することです。その犬が何を表現するために吠えているかを知るのです。
以下のリストは、あなたが相棒の無駄吠えに立ち向かう時、あなたの相棒がどのタイプの理由で吠えているのかを、あなが正確に知るための手助けになります。
あなたの相棒の無駄吠えとその対処方法についての情報を読み通した上で、リストの内容についてしっかりとあなたの答えを考えてください。
- いつ、どこで、あなたの相棒の無駄吠えは起こりますか?
- 吠える対象、標的は何ですが?
- どんなもの(人間、物、音あるいは動物)が無駄吠えを誘発しますか?
- あなたの相棒は何故吠えているのですか?
「静かに」というお願いを覚えてもらう
強迫観念的に吠える犬や興奮し切った状態の犬にはあまり有効とは言えませんが、あなたの相棒に「静かに」というお願いをする事はできます。
いくつかの記事の中にも書きましたが、その方法は様々です。
その犬にあった方法で「静かに」とお願いしてみましょう。
やってはいけないこと、やって欲しくないこと
私は、犬の笑顔が大好きです。
犬の笑顔を少しでも増やしたいと思っています。
そのために、犬の笑顔を奪うやり方は決してやるべきではないと思っています。
やむを得ずマズルを掴む時は、上から掴まないでください。
そこには息をするための鼻腔が通っています。
できれば、マズルを掴む状況は少ないほうが良いです。
怖がる犬もいるので、そういう犬には絶対にしないでください。
無駄吠えが止まらないからと言って、暴力を振るわないでください。
トレーナーさんのよほどの指示がない限り、罰を利用した訓練もしないでください。
犬の訓練に必要な心構えは奪うより与えることです。
簡単に犬の無駄吠えが止まるからといって、犬に苦痛を与えるような首輪やしつけグッズを使用しないでください。
人間に対する不信感を募らせるやり方は、無駄吠えを減らす根本的な解決策ではありません。
犬としっかりとした信頼関係が築けたら、必ず無駄吠えは減らせます。
安易な方法に走って犬の笑顔を奪わないでください。